「ナチュの森」のこと、
おはなしします
ナチュの森 ができるまで
はじまりは北海道と出会ったこと
この「ナチュの森」は、構想から10年をかけてようやく誕生した、スキンケアメーカー「ナチュラルサイエンス」と「ナチュラルアイランド」のフラッグシップ施設です。こうして、北海道にこのような場所を作ることができたこと、それ以前に北海道の自然の恵みをいただいてスキンケア製品をつくることになったことには、本当に不思議なご縁を感じています。
どうやって私たちが北海道に辿り着いたのか。それは、一人の研究者の探究心が導いてくれたと言っても過言ではありません。その人物は、長年タッグを組んでスキンケアづくりを行っている弊社の研究責任者の佐藤嘉純。
私たちは、共に原料開発を行う中でさまざまな土地や植物を候補にあげ、検討をしてきました。
佐藤は、開発へのこだわりに妥協がなく、興味がある植物や原料の情報が入るとすぐに足を運んで、実際に自分の目で確かめることを大切にしています。候補地のひとつだった北海道にもさっそく一緒に訪れ、私も彼も、その力強く大らかな北海道の大地の恵みにすっかり魅了されてしまったのです。
そして、2008年には、北海道でハーブの栽培とエキスを抽出することをはじめました。ハーブが開花する季節になると、社員数人が泊り込みで抽出実験を行いました。抽出作業を終わらせたある日、山の麓に伏流水が湧いているのを知り、はじめて飲んでみました。それはまさに感動の瞬間でした! 作業を終えて疲れた体にすっとやわらかく染み込んでいくような、やさしいおいしさを感じたのです。その時に、佐藤がふとつぶやいたのです。
「あぁ、北海道の水を使って、この大自然の中で化粧品を作ったら、どんなに素晴らしいものができるだろう。やってみたい」
この一言が、北海道工場を作ろうと思ったきっかけでした。
辿りついたのは俱多楽湖の名水
化粧品づくりに最適な、
やさしい水が見つかりました
一言に北海道といっても、とてつもなく広大な土地です。その中で工場をつくるなら、化粧品に最適な水のある場所がいい、そう考えていました。ですから、北海道に常駐していたスタッフと一緒にさまざまな水場を訪れ、妥協することなく探して、探して、探して、ようやく巡り合ったのが、俱多楽湖の湧き水「カムイワッカ」(アイヌ語で「神の水」)でした。この水の湧き口は、特に公にはなっていないのですが、遠方からわざわざ水を汲みに来る人が絶えないほど。この水を持ち帰り、その水質を検査してみると、肌にやさしい軟水で、他の成分の良さを引き立てるクリーンでピュアな名水であることがわかりました。その素晴らしさにあらためて魅せられ、この水こそが私たちが探し求めていたもの!と確信したのです。
「カムイワッカ」は、北海道白老町虎杖浜の森の中、倶多楽湖山裾にある小さな「親水公園」で湧いています。しかし、この場所の周辺には、とても工場を建てられるようなスペースはありませんでした。しかし、どうにかこの水で化粧品を作りたいと諦めきれずにいたとき、この公園の少し奥に、数年後に廃校になる予定の虎杖中学校があることを知りました。廃校になると言っても、この中学校に通う30名ほどの子どもたちはとても生き生きとすごしていて、校舎には落書きが一つもなく、大切にされていることが随所から感じられる、とても居心地が良い場所でした。そして、廃校後の活用方法は考え中だと、案内してくれた白老町役場の担当の方は悩ましげに話していました。
私はいつしか虎杖中学校という場所にも心が惹かれ始めていました。また同時に、「こんなに素敵な場所がなくなるなんて」という残念な気持ちも自然と生まれてきました。東京に戻ってからも、その気持ちと「俱多楽湖の水で化粧品を作りたい」という想いは、どんどん大きく膨らんでいきました。佐藤にその想いを話してみると、「自分も同じことを考えていた」と同意してくれたのです。それから二人で話し合い、「虎杖中学校の跡地に湧水を引き込んで工場を作れないか」と白老町に相談することになりました。
白老町虎杖浜の一員として
虎杖浜の人や自然と共に様々なことに取り組んでいきます
スキンケア製品づくりに最適な水と、その近くに素敵な場所が見つかったことはとても奇跡的なことです。けれども、工場をつくるにあたってはいくつかの困難がありました。はじめ、近隣の漁業関係者や住民の方から心配する声を多くいただいたのです。その主なものは「化粧品工場」というと、どうしても環境を汚す工場をイメージしてしまうところから派生した内容でした。白老町の関係者の方々に、東京本社の研究所や工場をご覧いただき、環境への徹底した取り組みや有害物質を一切使わないことを確認していただきました。そして少しずつ、私たちの作りたい工場のことを理解していただいたのです。
そして、環境を一切汚さないことを約束して、工場をこの地で操業する許可をもらうことができました。さらに湧水の使用許可も白老町と取り交わし、2014年には白老町から虎杖中学校の跡地を購入させていただくことができました。その時から決めていたのは、地元の人々の思い出が残る虎杖中学校の校舎や体育館は取り壊さずに、そのまま残して再利用しようということ。この場所が昔と変わらずに存在することは、災害避難場所などの用途において、地元のお役に立てると思ったのです。 当初、私たちの工場建設を心配された地元の方々とも、勉強会や地元のお祭り、清掃など地域活動への参加を通して、少しずつ関係を深めていきました。今では最大の理解者になってくださり、共に協力して町づくりに取り組んでいます。
スキンケア工園「ナチュの森」が誕生
安心いただける製品づくり、この地だからこそできる”想い“を届けるために
次に、私たちが取り組んだのは、スキンケア製品を製造する工場「ナチュラルファクトリー」をどの場所にどう作るかです。建てるにあたり、社員で何度も意見を出し合いました。「手術室並みのクリーン度で、製造設備を完備した工場にしたい」「自然を壊さないで、建設することは絶対だよ」「工場で使う排水や排熱も再利用しないと」「排水で環境を汚さない濾過システムも必要だね」「熱エネルギーも省力化した建物にしよう」「お客さまへの工場見学もやりたいよね」「工場でできた化粧品はすぐにお客さまにお届けしたい」などなど。 みんなの想いを出し合い、構想はどんどん積み上がっていきました。 そして、建てる場所はグラウンド跡地に決めました。既に整地されているので自然を壊すことがないからです。細部にこだわりが詰まった低刺激スキンケア製品工場「ナチュラルファクトリー北海道」の工事がスタート。この工場では、徹底した水質検査をすることで、倶多楽湖の湧水から製品作りを行うことができます。建物は省エネ構造にこだわり、工場の冷却水はトイレの排水に二次利用。工場の熱源を利用した溶岩浴ヨガスタジオやエステサロン、俱多楽湖の湧水を料理に使用したレストラン、工場で作った製品を販売する直営ショップなど、お客様にご利用いただく場所も整えました。私たちの「あったらいいな」と「もったいない」の精神が満載の施設です。2016年に完成したこの工場は、今では弊社の主力工場になっています。
さらに、ファクトリーの建設で出た掘削残土は再利用することで、丘を作り、旧中学校のグラウンドもガーデンに生まれ変わりました。芝生や樹木を植え、湧水を使用した噴水やビーチもできました。また、ガーデン作りの専門家の協力のもと、社員はガーデナーとして花やハーブを育てています。今では、お子さまやご家族、ご友人同士など多くの方に楽しんでいただく広場となりました。廃校になった当時は、荒地で鹿の糞だらけでしたが、1年かけてやり直し、今では見違える庭になってくれています。
製品づくりに欠かせない大切な仲間
ナチュラルアイランド研究薬香草園は、授産施設との協業により成り立っています
私たちは、スキンケアメーカーですので、化粧品づくりや肌や健康のことは日々研究し、高品質なモノとコトをご提供することに長年取り組んでいます。でも、植物を育てることは、北海道に来るまではまったくの素人でした。そんな私たちがガーデンを作り、有機農園でハーブ栽培を出来るようになったのは、授産施設の皆さんとの出会いがあったからです。
ナチュラルファクトリーの奥には、ナチュラルアイランドの成分開発に欠かせない植物を栽培している研究農園があります。雑林と野草で生い茂っていたこの土地は、一切の農薬が含まれていない場所でした。ここを開墾したら有機農園ができる、そう考えましたが、開墾作業は骨が折れる仕事です。そんな大変な作業を主に行ってくれたのは、授産施設フロンティアの皆さんです。雑林を取り除き、深く根を張った雑草や石ころを一つ一つ取り除く仕事を毎日コツコツと行ってくれました。私たちでは到底続かない作業を続けられる、根気がある方々です。そのおかげで有機認証を取得でき、いろいろな有機ハーブを育てることができています。アイランドの主力製品に配合されているカレンデュラのオイルは、フロンティアの皆さんがカレンデュラの花びらを1枚1枚丁寧に取りわけてくれているからこその品質です。 北海道に来て、心強い仲間たちと出会い、専門家に協力していただき、地元の方にも支えられて、私たちはこの場所で根を張ることができています。
10年の構想期間を経て生まれ変わった学び舎
自然と科学のミュージアム 森の工舎
白老町から、旧虎杖中学校を購入するにあたり約束したこと、それは校舎と体育館は残して、蘇らせることでした。北海道の仲間になり、約15年。この地で私たちがこの校舎を使って行うべき事は何なのか?またまた北海道と東京の社員全員で一生懸命考え、話し合いました。 うちの会社のメンバーは、自然大好き、おしゃれ大好き、理科大好き、本も大好き、そして子ども心もいっぱいです。それならば、自分たちや子どもたちの好奇心や夢が広がる体験ができたり、自然の中で本に囲まれた時間を過ごせたり、植物や香りのことをもっと深く探索できる、そんな場所にしたいとなりました。 そして、生まれたのが、「自然と科学のミュージアム 森の工舎」です。 この夢を実現するために、東京と北海道で活躍する、最強の建築家、デザイナー、プロデューサー、本の専門家の方々が、プロジェクトチームに参加してくれました。そしてプロジェクトはスタート。約1年でできるだろうと思っていましたが、スタートしてみるとまた困難がたくさんありました。例えば、校舎はもともと少人数の生徒が利用するための場所ですが、不特定多数の人が利用する施設となると建築の許可を変更しなければいけません。天井の重量を軽くする必要がある、構造上取れない壁がある、多目的トイレやバリアフリーにも配慮しなければいけないなどなど。新築の建物を計画するのとはまた違う課題がたくさんありました。そんな困難な状況の中、新型コロナウイルスの感染が社会で広がり、東京のメンバーが北海道に行くことができないという問題も出てきました。
それでも、最後まで共に作り上げてくれたチームやスタッフのおかげで、構想から10年、約4年というリノベーションの期間を経て、「森の工舎」がやっと誕生しました。学校で使われていたものを出来る限り再利用し校舎としての思い出を大切に守りながら、新しい息吹が中学校に吹き込まれたのです。 ワクワクが詰まったモノづくりの意味で「工」を、集い学ぶの意味で「舎(まなびや)」を、俱多楽山までの森の入り口であることから「森」という字を用い、「森の工舎」と名づけました。ここに訪れた人があそびや実験を通じて”不思議を突き止める科学のワクワク・ドキドキ“を体験し、自然を愛し、自然を知り、科学を学ぶことで、大切な自然と共存する方法を日々行うことができると私は思っています。この場所が本と出会いを楽しみ、植物との出会いを体験できる「自然と科学のミュージアム」として、皆さまにご活用いただきたいと願っています。
未来につなげるフラッグシップ施設として
建物とコンテンツはできましたが、ここからが本番です。 土地に根づき、地域と実りを分かちあう。次世代に世界の豊かさをつないでいく。そんな「ナチュラルサイエンス」と「ナチュラルアイランド」の想いを実践する場所がフラッグシップ施設「ナチュの森」です。 自然に恵まれ、古くからアイヌの人々に大切にされてきたこの場所は、ナチュラルな暮らしをサイエンスで支える場所、学びの場所として、これからもさまざまな取り組みを行い、大切に育ててまいります。 ぜひ一度、「ナチュの森」に足をお運びいただき、北海道の自然と化粧品に込めた弊社の想いを体感いただけたら幸いです。社員一同、みなさまのお越しを心よりお待ちしております。 最後までお読みいただき感謝いたします。
株式会社ナチュラルサイエンス
代表取締役 小松令以子
ナチュの森・
ナチュラルファクトリー
北海道 建設プロジェクト
水と自然の恵みを大切に、環境と品質を重視した工場と
居心地のよい施設づくりに取り組みました。
デザインコンセプトは以下のプロジェクトチームが実現してくれました。
株式会社竹中工務店
- 設計施工
小松大祐
- 建築デザイン
ウルトラタマ
- 空間ディレクション
高野ランドスケーププランニング株式会社
- ランドスケープ設計
株式会社コクサク
- ランドスケープ施行
株式会社プライミクス
- 化粧品製造機械
LITTLE
- アクアサロンデザイン
吉本設計事務所
- アクアサロン設計
有限会社北空間
- アクアサロン施工
株式会社タマイ
- 湧水の導水工事
森の工舎 リノベーションプロジェクト
旧虎杖中学校の校舎をリノベーションして
親子で楽しめる文化拠点施設づくりに取り組みました。
数々の困難の中、以下のプロジェクトチームが参加・協力してくれました。
トラフ建築設計事務所
(禿真哉、鈴野浩一)- 空間デザイン
BRANCH LIGHTING DESIGN
(中村達基)- 照明デザイン
AFFORDANCE
(平野篤史)- グラフィックデザイン
絵と言葉のライブラリー ミッカ/
株式会社トレック
(山本曜子)- ライブラリープロデュース
Tone&Matter
(広瀬郁、山本曜子)- 森の工舎プロデュース
ウルトラタマ
(宮田麻貴子)- ナチュの森総合プロデュース